Projects

宮尾研究室で取り組んでいる,あるいは取り組もうと考えている研究プロジェクトを紹介します。

イノベーションの制度化

  • イノベーションを組織に根付かせるにはどうすればいいのか
  • どうすればイノベーション・ハブはうまく機能するのか

これまでのイノベーション研究の多くは,その実現を主導した人に注目してきました。社内企業家や,新たに事業を起こす企業家に注目してきたわけです。しかし,ある程度規模の大きな企業が,意図的に革新的な製品・サービスを生み出そうとするならば,そのための仕組みを作る必要があるでしょう。私が2017〜2018年に訪問したRPIのGina O'Connor教授は「マーケティングが企業が当然のように保有する機能となったのだから,イノベーションも同様に企業の持つ機能の一つとなるべきだ」といいます。それが「イノベーションの制度化」です。

では,どうすればいいのか。ありえる方法の一つが,専門的にイノベーションにとりくむ「イノベーション・ハブ」を社内に設置することです。いわゆる Structural Ambidexterity です。その上で,そこに人材,知識を蓄積するとともに,それをうまく運営するための仕組みをつくるのです。

しかし,それで本当にうまくいくのか。このプロジェクトでは,イノベーション・ハブをうまく機能させ,イノベーションを組織に根付かせるための方法を,事例研究やサーベイ・リサーチによって明らかにしたいと考えています。この研究は,RPIのGina O'Connor教授との共同研究プロジェクトです。

イノベーション・プロジェクトのマネジメント

  • プロジェクト・マネジャーは,イノベーションに対する組織的な抵抗をいかにして乗り越えるのか
  • プロジェクト・マネジャーは,イノベーションの過程で発生するトラブルをいかにして乗り越えるのか

私が博士課程に進学し,研究者になろうと思ったときから取り組み続けているプロジェクトです。イノベーションには組織的な抵抗がつきものなのですが,プロジェクト・マネジャーはいかにしてそれを乗り越えるのか,その方法を明らかにしようとしています。博士論文では,特に新しい市場を創造する,という局面に注目してこの問題を検討しました。結果は,『製品開発と市場創造』にまとめています。

また,イノベーションを実現するためのプロセスには,トラブルがつきものです。現在は,イノベーターが製品開発・事業開発プロジェクトで直面したトラブルをいかにして乗り越えたかを調べています。注目するポイントは,組織の曖昧さへの耐性です。この研究は科研費プロジェクトと関係しています。

  • 2017 PDMA Research Forum@Chicagoで,このプロジェクトの成果をポスター発表しました(2017/11/11)。

象徴的価値の創造

  • 象徴的価値を創造するにはどうすれば良いのか

製品は,その機能にもとづく価値以上の価値を持つといわれることは多いです。国内の技術経営界隈では,これを意味的価値と呼びます(延岡, 2001)。このプロジェクトでは,その手の価値のうち,Ravasi, Rindova, & Stigliani(2011)いう象徴的価値(symbolic value of product)―使用者を社会的に位置づけるための有用性―を取り上げたいと思います。

象徴的価値は,使用者の社会的なポジショニングに役立つ度合いなわけですから,製品に生得的に備わっている属性だけでは決定されず,製品が使用される社会的な文脈にも依存して決定されます。これまでの研究の,特にマーケティング研究や文化人類学的研究の多くは,このような価値が認められる消費の局面に注目してきました。しかし,作り手はどうすればその過程に介入できるのでしょうか。もちろん,広告はそのための重要な手段ですが,製品そのものを開発する過程では,打つ手はないのでしょうか。このあたりには,手付かずの問題が眠っているように感じています。


延岡健太郎 (2011).『価値づくり経営の論理―日本製造業の生きる道』日本経済新聞出版社.

Rabasi, D., Rindova, V., & Stigliani, I. (2011). Valuing Products as Cultural Symbols: A Conceptual Framework and Empirical Illustration (pp. 297-316). In J. Beckert & P. Aspers (eds.) The worth of goods: Valuation & pricing in the economy, Oxford, UK: Oxford University Press.

Finding Ways That Won't Work

人はいかにしてうまくいかない方法を発見するのか

トーマス・エジソンは,自身の数多くの失敗について「私は失敗したのではない。うまくいかない方法を10,000通り見つけただけだ。」と言ったそうです*1。うまいこといいますね。このプロジェクトはいわゆる「失敗の研究」です。ですが,ストレートに失敗事例を調べようとしても,なかなか取材に応じていただくのは難しいです。そこで「うまくいかない方法を発見したときの話を聞かせてください」という取材なら答えてもらえるんじゃないか,と考えたわけです。

このプロジェクトはまだアイデア段階です。


*1: Wikiquoteによれば,本当にエジソンの言葉なのかには議論があるそうです。なお原文は「I have not failed. I have just found 10,000 ways that won't work.」です。